2011年12月22日木曜日

たんぽぽ舎さんからの転載



★1.食品に含まれる放射性物質の新たな基準値について
     国民の内部被曝を許容する政府の姿勢・基準は
                    今後改めさせねばならない
     乳幼児食品は限りなくゼロに近い基準であるべきだ

              安田 節子(食政策センター・ビジョン21)

○厚生労働省は、一般食品は現在の暫定基準値の5分の1に当たる、1キログ
ラム当たり100ベクレル、乳児用の食品と牛乳は50ベクレルなどとする方
針を発表。厚労省によると、世界保健機関(WHO)の基準を踏まえ、年間被
曝許容上限1ミリシーベルトのうち0.1ミリシーベルトを「飲料水」に振り
分け、1キロ当たり10ベクレルと設定。その上で食品中の放射性セシウムに
よる年間被曝を残る0.9ミリシーベルト以内に抑えられるよう、平均食品摂
取量などを考慮し、「一般食品」はセシウムで100ベクレルとした。「乳児
用食品」と「牛乳」はセシウムで50ベクレルとした。

 5分の1になったから、よかったと思う向きが多いかもしれない。しかし、
暫定基準を正式の基準に改め、今後長く運用される基準としてみると、国民の
内部被ばくを許容する政府の姿勢が見て取れるのだ。

 ICRPの勧告をもとに、日本では、法律で定めた公衆の年間被曝限度は外
部被ばく、内部被ばく合わせて1マイクロシーベルト(自然放射線被ばくと医
療被曝を除く)となっている。暫定基準値はこれを大幅に上げて設定された。
内部被曝だけで17マイクロシーベルトを許容し、これを4つの核種グループ
に割り振り、セシウムは5マイクロシーベルトとした。5つの食品ジャンルに
1マイクロシーベルトづつ割り当て導き出したのが500ベクレル/kgの基
準だ。暫定基準は通常の食品安全基準とは異なり、安全を担保するものではな
い。非常時のがまん値なのだ。今回それを5分の1の100ベクレルに引き下
げるというが、依然高すぎる。この規制値で出回る食品を国民が今後ずっと食
べ続けるなら、内部被ばくによって計り知れない数の健康被害を生み続けるだ
ろう。放射線にはこれ以下なら安全という閾値は存在しない。閾値の定められ
ない汚染物は食品に残留してはならないのが食品衛生法の原則だ。非常時の暫
定から通常規制にもどすのだから、国民の内部被ばくを防ぐ基準にならなけれ
ばおかしい。飲料水はWHO基準の10ベクレル採用というが、WHOは放射
能関係の基準策定においては、IAEAの了解を得なければならない協定が結
ばれており、そのためWHOの基準は推進の立場にたっていると批判されてい
る。飲料水はアメリカの0.111やドイツの0.5のように、コンマ以下で
なければいけないだろう。

○ドイツ放射線防護協会は内部被ばくは年間0.3ミリシーベルト以下として
いる。そして、日本政府に対し、乳児、子ども、青少年に対しては4ベクレル
/kg以上のセシウム137を含む飲食物を与えないように、成人は8ベクレ
ル/kg以上のセシウム137を含む飲食物を摂取しないことを推奨してい
る。

 日本の高い数値設定には希釈率0.5を採用していることがある。汚染され
た食品だけを口にするわけではないとし、汚染されていない食品を食べること
で汚染が薄まる「希釈」を考慮しているのだ。この希釈政策を停止するよう、
ドイツ放射線防護協会は11月27日に緊急勧告を発している。放射線防護に
おいては、汚染されたものを汚染されていないものと混ぜて希釈し通用させる
ことを禁止する国際的合意がある。日本の瓦礫処理や食品基準はこれに接触す
ると指摘。

 チェルノブイリ以降、わかってきたのは幼いものたちがこれまで考えられて
いた以上に感受性が高く低い線量で影響を受けていることだ。このことを考慮
して乳児用食品は大人の半分の50ベクレルにしたと厚労省は説明している
が、先の明治の粉ミルク「ステップ」で判明した30.8ベクレルくらいの汚
染があっても今後ずっと許容されることになる。ミルクは薄めて飲むからとい
うが、小さな体にそれだけを飲むのだし、体内被ばくは避けられない。乳児用
食品は限りなくゼロに近い基準であるべきだ。日本では汚染されていない原料
の入手は可能なのだから。

 基準値が緩いと、汚染の低いものと混ぜることで基準を容易にクリアーでき
てしまう。厳しい基準ではそれが困難になる。なによりも放射性物質につい
て、希釈すれば安全という誤った認識は払拭されなければならない。そして内
部被ばくを容認するような基準は改めさせねばなりません。

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